M&A

譲渡するための準備・心構え

中小企業のオーナー様にとって、M&A或いはM&Aについて相談できる場所が一般化していないため、誰にも相談できずに、M&Aを検討する、決断するということは、大変なご負担です。現状の日本では、中小企業のM&Aが一般化していないために、ほどんどの会社にとって取引がある銀行、税理士、会計士、弁護士に相談するしても、思いもよらないリスク或いは、全く徒労に終わる可能性があります。(勿論、M&Aに対するノウハウをお持ちの銀行、税理士、会計士、弁護士様もおられますので、そのような場合を除きます。)
そこで、ここでは、M&Aを検討・決断する際のポイント、つまりM&A(譲渡)し易い会社とは?買い手は何を見て買いを決断するのか?買い手は何を期待するのか?という視点から述べたいと思います。これが皆様のM&A、譲渡する第一歩になれば幸いです。
*下記、全てを備えている会社様はほとんどないと言っても過言ではありませんので、売却を検討されている経営者様もご安心ください。

事業の側面からみていきましょう。

正常収益力/安定した利益の計上

営業外収益や特別利益ではなく、営業利益で、安定した利益を計上していることは、買い手からすると、リスクの計算ができ、買収後の自社の収益に貢献するという判断することができます。

希望的な観測ではなく、合理的、客観的な事業の将来性

売主様の希望的観測ではなく、各資料から客観的、合理的に判断して将来性のある事業をお持ちであることは、交渉上当然ながら有利に働きます。

買収後の相乗(シナジー)効果

この買収後のシナジー効果を判断するのは、買収側であり、我々M&Aアドバイザーの仕事であります。買収候補者が現れる前に、対策を講じることは困難です。
しかし、売却を検討している経営者様に知っておいていただきたいのは、赤字であっても、借入過多であっても、御社の事業について、買収側がシナジー効果ありと判断した場合、予想を上回る条件の売却の機会が巡ってくる可能性があることは知っておきましょう。

入手困難な経営資産

M&Aは買収側の視点から見た場合、“時間を買う”と言えます。つまり、買収者が自ら、ゼロスタートで造り上げるよりも、経済的に合理性があると判断した場合、買収を考えます。
つまり、当該実務に精通し熟練している従業員の存在など、ゼロスタートで造りあげるより、買収した方が得であると買収者が判断するための経営資源は非常に有利に働きます。

例えば

  • 優良な顧客
  • 店舗立地
  • 優良な代理店
  • 優良で、新規獲得(口座開設)が困難な取引先
  • 入手困難、導入にコストのかかる設備、施設
  • 特許、商標件、独占契約などの排他的契約・権利
  • 社内に蓄積され、外からでは見えない、インビジブルな業務システムなど
  • 優秀な人材 etc.

経営者不在でも機能するビジネス・システム

譲渡と同時に引退をする場合はとくにそうですが、オペレーション、対顧客、対取引先に対して経営者への依存度が高すぎる場合は、M&Aにおいては不利に働く傾向があります。計画的なM&Aのためには、権限委譲と人に依存しないシステムの構築を意識しておくと、譲渡しやすいでしょう。

心理的な側面を見てみましょう。

客観的な目

M&Aの価格は、最終的には、双方の相対価格(双方が合意した価格)で契約が成立します。
交渉を経ずにこの合意価格が決まることはまずありません。
ここまで、育てあげた事業、続けてきた事業、売主様の思い入れがあるのは当然です。可能な限り、高く売りたいというのも当然です。しかし、一方で買収希望者は、可能な限り、安く買いたいと考えるのも当然です。
これは、売主様の希望価格に、事業への思い入れという心理的で時に非論理的な価格が加算されるのに対し、買主は、合理的、論理的な価値のみを価格に反映させようとするからです。
したがって、売主様は、思い入れ、思い込みを捨て、買主の考える合理的、論理的な価値を重んじる客観的な目を持つ必要があります。

経営管理的な側面を見てみましょう。

書類の記載事項を解明する

経営管理的な側面から譲渡しやすい会社の条件を上げるとすれば以下のような点が挙げられます。

  • 分散した株式の一極集中、あるいは、株主からの事前のM&Aへの合意
  • 不明瞭なコストの排除
  • 公私混同の排除
  • 正常在庫・不良在庫の区分
  • 振出手形、小切手の管理
  • 議事録の整備
  • 契約書類の整備
  • 会計帳簿の整備
  • 帳簿に載っていない負債等(いわゆる隠れ債務)の把握
  • 労働債務の排除

次に、戦略的な側面を見てみましょう。

客観的なアピールポイントを明確にする

思い込み、思い入れによらず、客観的で、極力定量的な自社のアピールポイントを整理し、買収候補者、M&Aアドバイザーに正確に伝えることは、M&Aの交渉上重要なウェイトを占めますので、十分にアピールすべきでしょう。

自社の弱み・改善点を把握する

上記アピールポイントだけではなく、弱みや改善点を整理し、それを正直に買収候補者、M&Aアドバイザーに伝えることは、後々のトラブルを防止するたけでなく、買収候補者から信頼を得ることにもなります。

明確な希望条件

M&Aは会社を丸ごと売買するので、M&Aの契約書に盛り込む内容は、売買価格だけではありません。売却後のオーナーの地位、従業員の地位など様々なことが双方の交渉によって盛り込まれます。売買価格以外でも、M&Aに付加する要望・希望はM&Aアドバイザーに相談しながら、明確しおくことは、後々のトラブル防止のためにとても重要です。

アドバザー(相談者)の選定

「M&Aは財務会計・税務・法律のるつぼ」と表現される様に、財務会計・税務・法律の他に、経営(戦略)を理解し、交渉やファシリテーション等のコミュニケーション能力の高さが必要となります。さらに、豊富な情報ネットワークが必要とされます。これらを持ち合わせた適切なアドバイザーの選定は、決定的に重要です。

人物的な側面を見てみましょう。

オープンマインドで対話する

会社の出口戦略として日本では比較的新しい手法であるM&Aですが、M&Aの根底にあるのは売り手と買い手との間の信頼です。譲渡希望者、M&Aアドバイザー、買収候補者相互の信頼関係がもっとも重要です。そして、この信頼関係の醸成は、“正直”に“隠さず”全ても開示することです。都合が悪いことほど、早く、積極的に開示することがM&Aにとって最も大切なことです。
最後に、弊社の企業・事業価値評価算定サービスM&A準備度診断サービスを是非ご利用ください。