M&A

M&Aの企業価値の評価方法について

類似会社批准法

類似会社比準法とは、評価対象会社に類似した上場企業の株価などの財務数値を基礎として、評価対象会社の株主価値を算定する方法です。

step1

類似上場企業の選定

四季報、アナリストレポート、インターネットなどの様々な情報ソースを利用して、事業ポートフォリオを重視しつつ類似の上場企業をリストアップします。

step2

比準数値(倍率)の決定

以下、よく利用される倍率をその特徴です。

step3

株主価値の算定

上記で選択した倍率を基に、評価対象企業の株主価値を算出します。この時、評価対象会社が非上場企業であるための非流動性ディスカウント(通常△20%~30%)、経営権の移転を伴う場合のコントロールプレミアム(通常+20%程度)を考慮する場合があります。

時価純資産法[ストックアプローチ]

時価純資産法とは、評価時点での資産の時価から負債の時価を控除して、株主価値を算定する方法です。

  • step1 資産の
    時価評価
  • step2 負債の
    時価評価
  • step3 株主価値の
    算定

step1の資産の時価評価→step2の負債の時価評価が株主価値となります。
これにのれん代に相当する部分(経常利益の3年から5年)を付加する場合もあります。

ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)[インカムアプローチ]

DCF法とはDiscounted Cash Flowの略語で将来発生するフリー・キャッシュ・フローを割引計算することによって事業価値を算定し、その事業価値に非事業資産の価値を加算して、有利子負債等の他人資本を差し引きすることにより株式価値を算定する方法です。

step1

事業計画書の作成(or 入手)

DCFは将来企業・事業が獲得するフリーキャッシュフローを前提とするため、対象企業・事業の事業計画書を入手する必要があります。対象企業・事業で事業計画書が作成されていない場合は、新たに作成する必要があります。
既に事業計画がある場合、新たに作成する場合のいずれにせよ、過去の当該企業・事業のトレンド分析や外部環境、内部環境などの様々な視点から導かれる実行可能な事業計画でなければなりません。

step2

フリーキャッシュフローの算出

上記の事業計画書からフリーキャッシュフローを算出します。

step3

割引率の決定

上記までのステップで計算されたフリーキャッシュフローは、当該企業・事業が“将来”獲得するであろうものです。ところが、当該企業・事業にかかるM&Aが行われようとしているのは、“現在”です。したがって、将来獲得するであろうフリーキャッシュフローを現在の価値に変換する(戻す)必要があります。将来獲得するフリーキャッシュフローをどのくらいの割合で現在に戻すのか?この割合を割引率といいます。
この割引率は、自己資本コストと他人資本コストをそれぞれの構成割合に応じて加重平均した割合でWACC(ワック)と呼ばれています。

step4

株主価値の算定

上記の割引率が決定されれば、将来、企業・事業が獲得するフリーキャッシュフローの現在の価値が算出可能となります。
これに、下記の式にあるように、事業外資産を加算しすることでこの企業の企業価値を算定し、そこから、有利子負債を控除したものが株主価値となります。DCF法による株主価値=将来獲得するフリーキャッシュフローの現在価値+事業外資産−有利子負債

M&Aの流れと企業価値算定のコンセプト
M&Aの譲渡価格はどうのように算定されるのか?
M&Aの条件は価格だけではありませんが、この譲渡価格は最も重要な条件の一つであることは間違いありません。
これから説明する譲渡価格の算定式には公知のものが存在しているわけではありません。選択する算定式、あるいは同じ算定式でも計算者によってその結果はマチマチなのが実情です。
最終的には、売り手と買い手の合意を得た価格での契約になりますが、叩き台に価格、参考になる値がないと交渉を進めることができないばかりでなく、後々のトラブルの原因にもなりかねません。下記の図(木俣貴光「企業買収の実務プロセス」中央経済社)の一般的なM&Aの買い手から見たM&Aの流れのでもあるように、最初の企業評価は、交渉前に行われるのが一般的です。
コスト・アプローチ
企業価値評価の手法の中の時価純資産(+営業権)を用いた評価方法の総称。他にインカム・アプローチやマーケット・アプローチがある。
インカム・アプローチ
企業価値の計算アプローチの一つで、将来の収益性を基準とした算出方式のこと。配当還元方式、収益還元方式、DCF法、APV法等がこれに含まれる。インカム・アプローチ以外の計算アプローチとしてはコスト・アプローチ、マーケットアプローチ等がある。
実際に企業価値判定が必要とされる現場では、実情に最も相応しいものを一つ選択するか、もしくは二つ以上を組み合わせて用いることになる。