TORUTEブログ
2026年8月
事業だけ残して会社を整理できる?~第二会社方式の仕組みと、熊本の相談現場で見る使いどころ~
2026/08/28 08:36|カテゴリー:M&A

こんにちは。熊本の事業承継・M&AコンサルティングファームのTORUTE(トルテ)です。「借入が重すぎて、このままでは会社がもたない。でも事業そのものは地域に必要とされているし、従業員も残したい」——熊本市や八代市のご相談でも、こうした声は少なくありません。会社という「器」ごと救えないときに、事業だけを別の会社へ移して残す方法が、いわゆる第二会社方式です。今回は、その仕組みと使いどころ、注意点を整理します。

第二会社方式とは、どういう仕組みか

第二会社方式とは、収益力のある「良い事業」を新しい会社(第二会社)へ事業譲渡や会社分割で移し、過大な借入などが残った元の会社は特別清算などで整理する、という再生の手法です。ポイントは、器を作り替えることで事業と債務を切り分けるところにあります。
事業を受け皿へ移す際は、譲渡対価を元の会社に入れ、それを原資として債権者への弁済にあてます。受け皿となる第二会社は、スポンサー企業が用意する場合もあれば、経営陣や後継者が設立する場合もあります。前回お伝えした再生型M&Aと組み合わせて使われることも多く、実務では「スポンサーを探しながら受け皿の形を決める」という進め方になります。
どんな会社が候補になるのか
第二会社方式が検討されやすいのは、次のような状況です。
ひとつは、本業は黒字なのに、過去の設備投資や不採算部門の借入が重くのしかかっているケース。もうひとつは、複数の事業を抱えていて、そのうち一部だけに継続価値があるケースです。逆に、事業そのものの収益力が失われている場合は、器を変えても状況は変わりません。まずは「移した先で本当に回るのか」を、資金繰りベースで冷静に見ることが出発点になります。
また、この手法は債権者である金融機関の理解が不可欠です。元の会社に残る債務は最終的に回収不能となる部分が出るため、金融機関にとって「清算するよりも回収額が大きい」と説明できる計画が求められます。熊本のご相談では、中小企業活性化協議会などの公的な支援機関を間に入れて協議を進める例もあります。
見落とされやすい注意点
第二会社方式は万能ではありません。特に注意したいのが次の点です。
第一に、許認可や契約が自動では引き継がれないことがあります。建設業や運送業などの許認可、賃貸借契約、取引先との基本契約、従業員の雇用は、それぞれ手続きや同意が必要です。ここを詰めないまま事業だけ移すと、移転後に営業が止まってしまいます。
第二に、対価が不当に安いと債権者を害する行為と見られるおそれがあります。第三者の評価を取るなど、価格の合理性を説明できる形にしておくことが重要です。
第三に、社長個人の保証の扱いです。会社を整理しても保証債務が自動的に消えるわけではなく、経営者保証に関するガイドラインに沿った別途の話し合いが必要になります。税務上の取扱いも含め、具体的な要件や効果は個別事情により異なりますので、早い段階で専門家にご相談ください。
まとめ
第二会社方式は、会社を残せなくても事業と雇用は残す、という発想の手法です。ただし、金融機関との協議、許認可や契約の引き継ぎ、対価の合理性、経営者保証の整理と、押さえるべき論点は多岐にわたります。そして何より、資金がまだ動いているうちに着手できるかで選択肢の幅は大きく変わります。制度や要件は改正されることもありますので、最新の情報をご確認のうえ判断してください。
TORUTEでは、熊本市・八代市を中心に、事業再生や事業承継、M&Aのご相談をお受けしています。「まだ決めていないけれど、選択肢だけ知っておきたい」という段階でも構いません。お気軽にご相談ください。
株式譲渡と事業譲渡どちらで売る?~1000万円以下の少額案件のスキーム選びと手取りの違い~
2026/08/27 08:42|カテゴリー:M&A、企業価値評価・株価

こんにちは。熊本の事業承継・M&AコンサルティングファームのTORUTE(トルテ)です。「うちの規模なら譲渡価格は1000万円もいかないと思うが、そもそも会社ごと売るのか、事業だけ売るのか、どちらがよいのか分からない」——こうしたご相談は少なくありません。金額が小さい案件ほど、進め方(スキーム)の選び方で手続きの重さも手取りも変わってきます。今回は1000万円以下の少額案件を念頭に、株式譲渡と事業譲渡のどちらで進めるかを整理します。

結論:少額案件は「買い手が引き継ぎたい範囲」で決まる
先に結論からお伝えすると、少額案件のスキームは、売り手の希望よりも「買い手がどこまで引き継ぎたいか」で決まる場面がほとんどです。会社そのもの(法人格)を丸ごと引き継いでよいと考える買い手なら株式譲渡、事業と必要な資産だけを取り込みたい買い手なら事業譲渡になります。特に買い手が個人や小規模な同業者の場合、簿外債務や過去の税務リスクまで背負うことを避けたいという理由から、事業譲渡が選ばれやすい傾向があります。
裏を返せば、売り手が「会社ごと引き取ってほしい」と考えているなら、決算書や契約関係を整理し、買い手が不安を持ちにくい状態にしておくことが、株式譲渡で進めるための近道になります。
株式譲渡と事業譲渡は何が違うのか

株式譲渡は、株主が持っている株式を買い手に渡す方法です。会社という器はそのまま残り、許認可・従業員の雇用・取引先との契約も原則としてそのまま続きます。手続きが比較的軽く、少額案件でもスピード感を出しやすいのが利点です。一方で、買い手は簿外の負債や未払い残業代といった見えないリスクごと引き継ぐことになります。
事業譲渡は、会社が持っている事業や資産を個別に売る方法です。引き継ぐ対象を選べるためリスクを切り分けやすい反面、取引先との契約や従業員の雇用は原則として結び直しが必要で、許認可も取り直しになることがあります。手間は増えますが、「この店舗とこの設備だけ引き継ぎたい」といった要望に応えやすい方法です。
少額案件で事業譲渡が選ばれやすい場面
実際のご相談では、次のような場合に事業譲渡が現実的な選択肢になります。ひとつは、社長個人の資産と会社の資産が混ざっていて、会社ごと渡すと整理が難しいケース。もうひとつは、複数事業のうち一部だけを譲り、残りは手元に置いて畳みたいケースです。また、会社に借入や係争が残っており、買い手がそれを引き継ぎたくないという理由から事業譲渡になることもあります。
ただし事業譲渡を選ぶと、譲渡後に会社は抜け殻として残ります。その会社をどう処理するか(休眠にするのか清算するのか)まで決めておかないと、後になって費用と手間が発生します。ここは早い段階で方針を決めておきたいところです。
売り手の手取りは同じ金額でも変わる
見落とされやすいのが、同じ「譲渡価格1000万円」でも手元に残る金額が変わるという点です。株式譲渡では、代金を受け取るのは株主である社長個人です。事業譲渡では、代金を受け取るのは会社であり、社長個人が受け取るには役員退職金や配当といった形で会社から出す必要があります。課税される主体も税目も異なるため、価格だけを見て比較すると判断を誤ります。
また、事業譲渡では消費税の扱いも論点になります。具体的な税負担は会社の状況や譲渡する資産の内容によって大きく変わりますので、必ず顧問税理士や専門家に個別に試算してもらったうえで比較してください。
まとめ
1000万円以下の少額案件でも、株式譲渡と事業譲渡のどちらで進めるかは重要な分かれ道です。買い手が引き継ぎたい範囲、会社に残るリスク、そして売り手の手取りという3つの視点で検討すると、方向性が見えやすくなります。なお、税務・法務の取扱いは個別事情により異なりますので、実際に進める際は必ず専門家にご相談ください。
TORUTEでは、熊本市・八代市を中心に、小規模な事業の譲渡についてもご相談をお受けしています。「この規模でも相手が見つかるのか」「どちらの方法が向いているのか」といった段階のご相談で構いません。お気軽にご相談ください。
会社をたたむ費用に補助金は使える?~事業承継・M&A補助金『廃業・再チャレンジ枠』の対象と申請の流れ~
2026/08/26 16:26|カテゴリー:事業承継、補助金・助成金

こんにちは。熊本の事業承継・M&AコンサルティングファームのTORUTE(トルテ)です。
「もう会社をたたむしかないと思っているが、たたむのにもお金がかかると言われた」。そんなご相談をいただくことがあります。店舗の原状回復、機械の撤去、在庫の処分、リース契約の解約金――廃業は「やめれば終わり」ではなく、まとまった費用が出ていく手続きです。手元資金が細っているほど、そのお金が用意できずに動けなくなってしまいます。実は、この廃業にかかる費用の一部には、国の補助金が使える可能性があります。今回は事業承継・M&A補助金の「廃業・再チャレンジ枠」について整理します。

結論:廃業にかかる費用も、補助の対象になり得る
事業承継・M&A補助金には、廃業に伴う費用を対象とする枠が設けられています。廃業を「失敗」ではなく、経営資源を次に振り向けるための一つの選択と位置づけ、その費用負担を軽くしようという趣旨の制度です。廃業費用そのものが対象になるという点で、他の補助金とは性格が異なります。ただし、単に事業をやめるだけで自動的に受け取れるものではなく、後述する要件を満たす必要があります。補助率や上限額、対象となる廃業の範囲は公募回ごとに見直されますので、必ず最新の公募要領をご確認ください。
「単独で使う場合」と「他の枠と一緒に使う場合」がある
この枠の使い方は、大きく二通りに分かれます。一つは、事業承継やM&Aに取り組む中で不採算部門や一部の店舗を整理する場合に、他の枠(専門家活用枠や経営革新枠など)と併せて上乗せで使う形です。もう一つは、再チャレンジを前提として事業全体を廃業する場合に、単独で申請する形です。後者は「廃業したうえで、新しい事業に挑戦する」ことが前提になるため、その後の計画をどう描くかが問われます。ご自身のケースがどちらに当たるかで、準備する資料も申請の組み立ても変わってきます。
対象になる費用・ならない費用の考え方
対象として想定されているのは、廃業に直接ひもづく外部への支出です。店舗や工場の原状回復にかかる工事費、設備の解体・撤去や処分の費用、リースの解約に伴う費用、廃業手続きを依頼する専門家への報酬などが典型例です。一方で、金融機関への借入金の返済、従業員への退職金、税金や社会保険料の支払いといった、事業をたたむかどうかに関わらず本来負担すべきものは、対象外とされるのが一般的です。「支払うお金なら何でも見てもらえる」わけではない点は、最初に押さえておきたいところです。判断に迷う費用は、見積書の段階で認定経営革新等支援機関に確認しておくと安心です。
申請の流れ――先に準備しておきたいこと

申請は電子申請システムで行うため、まずgBizIDプライムの取得が必要です。この取得には書類の郵送と審査で日数がかかりますので、公募が始まってから動くと間に合わないことがあります。公募開始前に取っておくのが実務上の鉄則です。あわせて、認定経営革新等支援機関の確認や、廃業費用の見積書の取得も先に進めておきます。交付決定の前に発注・契約してしまった費用は対象外になるのが原則ですので、工事や撤去の発注は必ず交付決定を待ってから行ってください。
まとめ
廃業にかかる費用に補助金が使える可能性があると知っているかどうかで、選べる道は変わります。そして、この制度は「まだ動ける段階」で相談に来られた方ほど活かしやすいものです。資金が完全に尽きてからでは、交付決定を待つ時間そのものが取れなくなってしまいます。また、廃業を検討していた会社が、話を伺うと事業の一部に買い手がつき、M&Aや再生という別の出口に切り替わることも珍しくありません。補助金の要件、対象経費、公募スケジュールは回ごとに変わり、個別事情によっても結論は異なります。TORUTEでは熊本市・八代市を中心に、廃業・事業承継・M&Aのご相談を承っています。どの道を選ぶべきか迷っている段階で構いませんので、まずは専門家にお気軽にご相談ください。
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