TORUTEブログ
M&A
事業譲渡が0円になるのはなぜ?~熊本の相談現場で見る、価格がつかない理由と『0円でも譲る』選択~
2026/07/27 12:11|カテゴリー:M&A

こんにちは。熊本の事業承継・M&AコンサルティングファームのTORUTE(トルテ)です。
「事業譲渡 0円」——このように検索される社長さまは、決して少なくありません。譲渡の話を進めていたら提示額がほとんどゼロだった、あるいは、そもそも「0円でいいから引き取ってほしい」と考えている。どちらの場合も、その裏側にあるのは「自分が育てた会社には、本当に価値がないのだろうか」という不安です。今回は、事業譲渡の価格が0円になるのはなぜなのか、そして0円であっても譲る意味はあるのかを、熊本の相談現場で見えてきた視点から整理します。
結論:0円の事業譲渡は珍しくなく、「価値がない」ことと同じではありません
先に結論からお伝えすると、譲渡価格が0円、あるいはそれに近い金額になる事業譲渡は、実務のうえで決して例外的な話ではありません。そして重要なのは、価格が0円であることと、その事業に価値がないことは、まったく別だという点です。
譲渡価格は、多くの場合「純資産(資産から負債を差し引いたもの)」と「これから生み出す利益」の二つを土台に組み立てられます。たとえ現場に確かな技術があり、長く続いた取引先があっても、借入金が資産を上回っていれば、計算上の価格はゼロやマイナスに近づきます。つまり0円という数字は、会社の実力そのものではなく、貸借対照表と将来収益の見合いが表面に出た結果にすぎません。
譲渡価格が0円になる主な理由

相談の場でよく見られるのは、次のような背景です。いずれか一つだけということは少なく、複数が重なっているケースがほとんどです。
第一に、借入金や未払金といった負債が大きく、買い手がそれを引き継ぐ前提になっている場合です。買い手から見れば、対価を支払ったうえに負債まで背負うことになるため、その分が価格から差し引かれます。第二に、直近の業績が赤字、あるいは利益がほとんど出ていない場合です。将来生み出す利益から価格を考える以上、その源泉が細ければ数字は伸びません。第三に、社長個人の営業力や技術に売上が集中している場合です。社長が退けば取引が続かないと見られれば、買い手は将来の利益を慎重に見積もらざるを得ません。
0円でも譲る意味はあるのか
「それなら廃業したほうが早いのでは」と言われることがあります。しかし、実際に両方を並べて比べていただくと、譲渡を選ばれる社長さまは少なくありません。
廃業には、設備の処分費用、店舗や工場の原状回復、従業員への対応など、まとまった支出が伴います。0円で譲渡できるということは、これらの負担を負わずに事業を次へ渡せるということでもあります。加えて、従業員の雇用と取引先との関係が途切れず、社名や屋号、長年培った信用が地域に残ります。買い手にとっても、既にある人材・許認可・顧客をそのまま引き継げることには相応の意味があり、だからこそ0円でも話がまとまります。会社を清算して手元に残る金額と、譲渡することで失わずに済むものを並べて比べることが、判断の出発点になります。
0円だからこそ確認したい実務上の注意点
金額が小さいと手続きも簡単だと考えられがちですが、実際はむしろ逆です。
事業譲渡では、取引先との契約や許認可、従業員との雇用関係は自動的には引き継がれず、一つずつ手当てが必要になります。契約に相手方の承諾を要する条項がないか、営業に必要な許認可が引き継げる種類かどうかは、早い段階での確認が欠かせません。また、社長個人が会社の借入金の連帯保証人になっている場合、譲渡後もその保証が残ってしまわないよう、金融機関との調整が必要です。税務の扱いも、譲渡の対象や価格の決め方によって結論が変わり得ます。特に価格が著しく低い場合の課税関係は個別性が高いため、必ず税理士など専門家にご相談ください。
まとめ
事業譲渡の価格が0円になる背景には、負債の大きさ、直近の収益力、社長への依存度といった、数字に表れやすい要因があります。それは「価値がない」という評価ではなく、あくまで現時点の見合いを示した数字にすぎません。大切なのは、廃業した場合に出ていく費用と、譲渡によって守れるものを並べて比べたうえで、納得のいく道を選ぶことです。
TORUTEは熊本市・八代市を中心に、事業承継や事業譲渡のご相談を承っています。「うちは値段がつかないだろう」と感じておられる段階でも、実際に整理してみると選択肢が残っていることは少なくありません。判断を急ぐ必要はありませんので、まずはお気軽にご相談ください。
会社の値段はどう決まる?~中小企業M&Aの企業価値評価3つのアプローチ~
2026/07/10 12:31|カテゴリー:M&A

こんにちは。熊本の事業承継・M&AコンサルティングファームのTORUTE(トルテ)です。「うちの会社を譲るとしたら、いったいいくらの価値があるのだろう」——事業承継やM&Aを考え始めた経営者の多くが、まず気になるのがこの点ではないでしょうか。企業価値は決算書の数字だけで一律に決まるものではなく、いくつかの評価アプローチを組み合わせて算定します。今回は、中小企業のM&Aで用いられる代表的な3つの評価方法と、その考え方をわかりやすくご紹介します。
企業価値評価の3つのアプローチ
企業価値の評価方法は、大きく「コストアプローチ」「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」の3つに分類されます。それぞれ着目する視点が異なり、会社の実態や取引の目的に応じて使い分け、あるいは組み合わせて用います。まずは全体像を整理してみましょう。

純資産をもとにする「コストアプローチ」
コストアプローチは、会社が持つ資産と負債の差額である純資産に着目する方法です。帳簿上の純資産をそのまま使うのではなく、土地や有価証券などを時価に評価し直した「時価純資産」を基準とし、これに数年分の利益をもとにした営業権(のれん)を加える方式が中小企業ではよく使われます。財産の裏づけがあるため客観性が高く理解しやすい一方、会社の将来の稼ぐ力が価格に反映されにくいという側面もあります。
似た事例と比べる「マーケットアプローチ」
マーケットアプローチは、事業内容や規模が似た上場企業の株価や、過去のM&A取引事例と比較して価値を推し量る方法です。市場での評価水準を反映できるため説得力がありますが、中小企業では比較対象となる類似企業や事例を見つけにくく、そのままでは適用が難しいケースも少なくありません。実務では他のアプローチを補う参考値として使われることが多い方法です。
将来の収益力に着目する「インカムアプローチ」
インカムアプローチは、会社が将来生み出すと見込まれる利益やキャッシュフローを現在の価値に割り引いて評価する方法です。代表例がDCF法(ディスカウンテッド・キャッシュフロー法)で、会社の成長性や収益力を価格に反映できるのが大きな特徴です。買い手が「この会社を買えば将来どれだけのリターンが得られるか」を重視するM&Aの場面と相性がよい一方、将来予測の前提の置き方によって金額が大きく変わるため、事業計画の妥当性が問われます。
まとめ
企業価値評価には唯一絶対の正解があるわけではなく、複数のアプローチを組み合わせ、会社の実態と取引の目的を踏まえて総合的に判断します。そして最終的な取引価格は、算定された評価額を土台にしつつ、買い手・売り手の交渉によって決まっていくものです。日ごろから財務を整え、自社の強みを「見える化」しておくことが、いざというときに納得のいく評価につながります。なお、具体的な評価額の算定や税務の取り扱いは個別事情によって異なりますので、必ず専門家にご相談ください。TORUTEは熊本市・八代市を中心に、事業承継・M&A・財務コンサルティングを行っています。自社の価値を知りたい、将来に備えて準備を始めたいという経営者の方は、お気軽にご相談ください。
M&Aの進め方~相談からクロージングまでの流れと期間の目安~
2026/07/08 08:40|カテゴリー:M&A

こんにちは。熊本の事業承継・M&AコンサルティングファームのTORUTE(トルテ)です。「そろそろM&Aで会社を譲ることも考えたいが、実際どういう順番で進むのか、どれくらいの期間がかかるのか、まったくイメージがわかない」——初めてご相談にお越しになる経営者の方から、最もよくいただく声のひとつです。M&Aは一生に一度あるかないかの取引ですから、全体像が見えないのは当然のことです。今回は、中小企業のM&Aが「相談」から「成約後の統合」まで、どのような流れで進んでいくのかを、期間の目安とあわせて整理してご紹介します。
M&Aは大きく6つのステップで進む
中小企業のM&A(会社や事業の譲渡)は、おおまかに次の6つのステップに分けて考えると全体像がつかみやすくなります。それぞれの段階でやるべきことと、注意すべきポイントが異なります。まずは下の図で全体の流れを俯瞰してみてください。

準備・相手先探し・基本合意まで
最初のステップは「ご相談・準備」です。なぜ譲りたいのか(引退・後継者不在・成長戦略など)という目的を整理し、専門家とともに自社の企業価値をおおまかに把握します。ここで譲渡の方針や希望条件を固めておくことが、後の交渉の土台になります。
次に「相手先探し・マッチング」です。仲介会社やアドバイザーが、譲渡先の候補となる企業をリストアップし、匿名の資料で打診していきます。関心を示した相手が現れたら、秘密保持契約を結んだうえで具体的な情報を開示します。そして「トップ面談・基本合意」では、経営者同士が直接顔を合わせて経営理念や従業員への思いを確認し合い、大筋の条件について基本合意書(意向表明)を取り交わします。この段階までで、着手からおおむね半年前後を要することが多いといえます。
デューデリジェンスから成約・統合へ
基本合意の後は「デューデリジェンス(買収監査)」に入ります。これは買い手側が、財務・税務・法務・労務などの観点から売り手企業を詳しく調査する手続きです。ここで簿外債務や未払い残業代といったリスクが見つかると、条件の見直しや破談につながることもあります。売り手としては、日頃から書類を整理し「見える化」しておくことが、スムーズな成約への近道になります。
調査を経て双方が納得すれば「最終契約・クロージング」です。株式譲渡契約などを締結し、株式の移転と譲渡代金の決済を行って、正式に経営権が引き継がれます。そして忘れてはならないのが最後の「PMI(統合プロセス)」です。従業員や取引先への説明、業務・制度のすり合わせなど、成約後こそが会社を次の成長につなげる大切な期間となります。
まとめ
M&Aは、相談から成約まで一般的に半年から1年程度、規模や状況によってはそれ以上かかることもある、長期戦のプロジェクトです。だからこそ、思い立ったときに早めに準備を始め、各ステップの意味を理解しながら進めることが、納得のいく結果につながります。なお、実際の契約内容や税務の取り扱いは個別の事情によって大きく変わりますので、必ず専門家にご相談ください。TORUTEは熊本市・八代市を中心に、事業承継・M&A・財務コンサルティングを行っています。「まずは全体の流れだけ聞いてみたい」という段階でも構いません。どうぞお気軽にご相談ください。
最近の投稿
- 事業譲渡が0円になるのはなぜ?~熊本の相談現場で見る、価格がつかない理由と『0円でも譲る』選択~
- 事業承継は『九州』まで視野を広げるべき?~熊本の相談現場で見る、後継者・相手探しの選択肢の広げ方~
- 事業承継補助金の対象経費とは?~熊本の相談現場で見る、対象になる費用・ならない費用の見分け方~
- 事業承継の失敗事例に共通する落とし穴とは?~熊本の相談現場で見る、承継がうまくいかない4つのパターン~
- 「黒字なのに廃業」はなぜ起きる?~熊本の相談現場で見る、会社を残すために早めにすべきこと~
- 「今後危ない業界」と言われたら?~熊本の相談現場で見る、同じ業界でも明暗を分けるポイント~
- 熊本で事業承継はいつ始める?~「まだ早い」が選択肢を狭める理由と相談現場のポイント~
- 親の会社を継ぐべきか迷ったら?~判断のポイントと承継の進め方をわかりやすく解説~
- 事業承継補助金は親子間でも使える?~対象要件と申請のポイントをわかりやすく解説~
- 後継者育成の進め方~計画的に次世代リーダーを育てる5つのステップ~