TORUTEブログ

事業再生・廃業

熊本地震の被害で会社が立て直せないときは?~二重債務と災害特例をふまえ、熊本の相談現場で整理したい4つの道筋~

2026/10/16 08:40|カテゴリー:M&A、事業再生・廃業

熊本地震の被害で会社が立て直せないときは?

こんにちは。熊本の事業承継・M&AコンサルティングファームのTORUTE(トルテ)です。令和8年の熊本地震から数か月が経ち、店舗や工場の修繕はひと通り終わったという会社も増えてきました。ところが、ここに来て「売上が地震の前まで戻らないのに、復旧で借りたお金の返済が始まる」というご相談が、熊本市・八代市の両方から増えています。地震の前からあった借入と、復旧のために新しく借りた借入が重なる、いわゆる二重債務の状態です。今回は、被災のあとに会社を立て直せないと感じたとき、どの順番で手を打てばよいのかを、熊本の相談現場の視点で4つの道筋に整理してお伝えします。

修理が終わった熊本の町工場の前で、社長と相談相手が帳簿を見ながら話し合っている様子

1. 「建物は直った、客足は戻らない」が一番しんどい

被災直後は、り災証明書の取得や保険の請求、設備の入れ替えなど、やることがはっきりしています。社長も従業員も気が張っていて、何とか動けます。苦しくなるのはその半年後です。建物は直ったのに人通りが戻らない、取引先が他県の業者に切り替わったまま戻らない、従業員が被災を機に離職した──こうした「地震が直接壊したわけではない損失」は保険でも補助金でも埋まりません。

そして、この時期にちょうど災害関連融資の据置期間が切れ始めます。手元の現金は復旧工事で使い切っているのに、返済額だけが地震の前より増えている。熊本の相談現場で「もう無理かもしれない」と言われるのは、ほぼこのタイミングです。大事なのは、この段階はまだ資金ショートの前だということです。選べる手が一番多い時期でもあります。

2. まず確認するのは、県と公庫の災害向けメニュー

被災後の立て直しで検討する順番を示した図解

手を打つ順番としては、新しい資金と条件変更が先です。熊本県には地震を受けた融資制度が用意されており、令和8年熊本地震の影響で売上が減っている(または減る見込みの)事業者を対象とした枠があります。保証料を県が補助する扱いになっているものもあり、窓口は熊本県商工労働部商工振興金融課です。国の側でも、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫の災害復旧貸付、信用保証協会のセーフティネット保証、商工会議所・よろず支援拠点の特別相談窓口が動いています。

制度の限度額・期間・対象要件は公募や受付の回次ごとに変わりますので、必ず最新の案内をご確認ください。あわせて、すでにある借入の返済条件を緩めてもらう交渉も同時に進めます。この進め方は銀行にリスケを申し込むとどうなる?で詳しく書いていますが、被災が原因の場合は、地震の前後で数字がどう動いたかを示せるかどうかで銀行の受け止め方が変わります。月次の試算表と、地震前の同月の売上を並べた一枚を先に作ってください。

3. 借り換えでは届かないときは、私的整理のガイドラインを検討する

新しく借りても、返済総額が増えるだけで返しきれない──そう見えたら、借入を減らす方向の話に切り替える必要があります。ここで出てくるのが、裁判所を使わずに金融機関と話し合う私的整理です。中小企業の事業再生等に関するガイドラインや、経営者保証に関するガイドラインといった枠組みがあり、自然災害で被災した方向けの債務整理の枠組みも設けられています。

私的整理が選べると、取引先には知られずに進められる可能性が残り、事業を止めずに済むことが多くなります。裁判所を使う法的整理との違いは資金繰りが厳しくなったら会社はどうなる?にまとめました。熊本では中小企業活性化協議会が入口になることが多く、どの枠組みが使えるかは債務の額・金融機関の数・被災との因果関係などで変わりますので、早い段階で専門家にご相談ください。

4. 事業を残す最後の道筋は、再生型M&A・事業譲渡

会社という器を残すのが難しくても、事業そのものは残せる場合があります。スポンサーに入ってもらう、あるいは採算の取れる部門だけを事業譲渡で引き継いでもらう方法です。被災地では「設備は新しくなったが返済が重い」という会社がこれに当てはまりやすく、復旧で入れ替えた機械や改修済みの店舗が、買い手から見ると魅力になることがあります。

ただし、この道筋には時間が要ります。相手を探して条件をまとめるまで、短くても数か月です。資金が尽きてからでは買い手が付きません。詳しくは債務超過でも会社は残せる?をご覧ください。熊本市・八代市では、同じ業種の同業者が地震後の人手不足を埋めるために引き受けを検討する、という動き方も実際に見られます。

まとめ

被災後の立て直しは、①災害向け融資と条件変更 → ②私的整理のガイドライン → ③再生型M&A・事業譲渡、という順番で検討の幅が狭くなっていきます。どの段階にいるかを見誤らないことが何より大切で、判断が遅れるほど選べる道筋は減ります。地震の影響は、決算書に出てくるまでに半年から一年のずれがあります。「まだ回っているから」と先送りにせず、数字が動き始めた今の段階で一度整理してみてください。

TORUTEは熊本市・八代市を中心に、事業再生と第三者承継のご相談をお受けしています。被災後の返済がどうなるか、事業を残す道がありそうかを一緒に見るだけでも構いません。お気軽にご相談ください。

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給与は後回しにできる?~資金繰りが苦しいとき、再生の相談現場で見る支払いの優先順位~

2026/10/06 09:11|カテゴリー:M&A、事業再生・廃業

給与は後回しにできる?

こんにちは。熊本の事業承継・M&AコンサルティングファームのTORUTE(トルテ)です。

資金繰りが厳しくなったとき、「仕入先への支払いは待ってもらえても、従業員の給与だけは遅らせられない」と感じる経営者は多いと思います。一方で、「まず給与を払い続けるべきか、それとも銀行返済を優先するべきか」と迷われる方も少なくありません。今回は、再生の相談現場でよくご質問をいただく、給与・社会保険料・退職金の優先順位と、事業を残すための考え方を整理します。

資金繰りを相談する経営者と従業員

給与の遅れは「後回し」にしてよい支払いではありません

取引先への買掛金や金融機関への返済は、相談して条件を見直せる余地があります。一方、従業員の給与は労働基準法により毎月1回以上、全額を支払う義務があり、「資金繰りが苦しいから」という理由で遅らせることは原則として認められていません。

また、実務上も給与の遅れは従業員の不安に直結し、退職が相次いで事業そのものが回らなくなる原因になります。再生は事業を続けることが前提ですから、現場の人が辞めてしまう状況は、買い手や支援者を探すうえでも大きなマイナスです。

資金が足りなくなりそうな場合は、遅れが出てから動くのではなく、「あと何か月、給与を払える現金があるか」を早めに数字で把握することが出発点になります。

社会保険料・税金・退職金はどう考えるか

支払いの考え方4つ

給与と並んで悩みやすいのが、社会保険料や源泉所得税など、預かり金に近い性質のものです。これらは滞納が続くと延滞金が加算され、差押えに進むこともあります。ただし、早めに年金事務所や税務署へ事情を説明し、分割納付などの猶予を相談できる場合もあります。放置せず、窓口に先に連絡することが大切です。

退職金は、就業規則や退職金規程の内容によって扱いが変わります。社内の積立がない場合、まとまった資金が必要になる点が負担になりがちです。再生型M&Aでは、退職金債務を買い手へどう引き継ぐか、あるいは別の形で整理するかが、条件交渉の重要な論点になります。

こうした支払いの優先順位は、会社の状況や契約内容により異なります。個別の判断は、必ず弁護士・税理士などの専門家にご確認ください。

万が一のときの国の制度と、事業を残す選択肢

会社が倒産し、給与や退職金が払えないまま退職となった場合には、一定の要件のもとで国が未払賃金の一部を立て替える「未払賃金立替払制度」があります。対象となる条件や立替額には上限や期間の定めがあるため、詳細は最新の案内をご確認ください。ただし、これは最後のセーフティネットであり、従業員の生活や会社の信用を考えれば、そこへ至る前の対応が重要です。

事業に価値が残っているなら、会社を畳む前に、事業譲渡や再生型M&Aで雇用ごと引き継いでもらう方法もあります。買い手が従業員を引き継ぐことで、給与の支払いが続き、現場の信頼も守りやすくなります。熊本の相談現場でも、「廃業を考えていたが、事業だけを引き継いでもらえた」というご相談は少なくありません。

具体的な進め方は、資金の残り期間、債務の内容、買い手候補の有無によって大きく変わります。

まとめ

給与は後回しにできない支払いであり、社会保険料や税金も放置せず窓口へ早めに相談することが重要です。そのうえで、事業に価値があるなら、再生型M&Aで雇用ごと引き継ぐ道も検討できます。判断が難しい点は、専門家にご相談ください。

熊本市・八代市で、資金繰りや従業員の給与の支払いに不安がある経営者の方は、手遅れになる前にお気軽にご相談ください。

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再生の相談は取引先に知られる?~熊本の相談現場で見る、仕入先への伝え方と買掛金の扱い4つの要点~

2026/10/04 08:56|カテゴリー:M&A、事業再生・廃業

再生の相談は取引先に知られる?

こんにちは。熊本の事業承継・M&AコンサルティングファームのTORUTE(トルテ)です。

資金繰りが苦しくなり、再生型M&Aや事業の譲渡を考え始めた経営者から、熊本・八代の相談現場でよく聞かれるのが「取引先や仕入先に知られて、取引を止められないだろうか」という不安です。今回は、再生局面での取引先への伝え方と、買掛金(仕入先への未払い)の扱いを整理します。

取引先と話し合う経営者

取引先に知られると、本当に取引は止まるのか

再生の相談を始めただけで、取引先に通知が届くわけではありません。私的な整理や、スポンサーを探す段階では、相談先も検討内容も限られた人だけで進めるのが基本です。

ただし、どこで情報が漏れるかは案件によって違います。買い手候補へ資料を出す際は、社名を伏せたノンネーム資料から始め、秘密保持契約を結んでから詳細を開示します。進め方を誤ると、噂が先に広がる点には注意が必要です。

実際に取引が厳しくなるのは、支払いの遅れが目立ち始めたときです。仕入先が現金取引や前払いを求めてくると、資金繰りはさらに悪化します。だからこそ、噂が広がる前に方針を決めることが大切です。

仕入先・取引先に伝えるタイミングと順番

取引先への伝え方 4つの順番

伝える時期は、事業を引き継ぐ先の見通しが立ってからが原則です。見通しがないまま「再生を検討中」とだけ伝えると、不安だけが広がります。

順番としては、まず事業の継続に欠かせない主要な仕入先と販売先、次に従業員、その後にそれ以外の取引先、という整理が現実的です。誰にどの順で何を話すか、事前に紙に書き出しておくと、説明がぶれません。

説明の中心は「事業は続く」「今後の支払いはどうなるか」の2点です。過去の未払いの扱いと、これからの取引条件を分けて話すと、相手も判断しやすくなります。

買掛金はどうなるのか

再生型M&Aで、会社ごとではなく事業だけを引き継ぐ形(事業譲渡や第二会社方式)を取る場合、買掛金などの債務は自動的に引き継がれません。引き継ぐ範囲は、契約で個別に決めます。

ここで気をつけたいのが、事業に不可欠な仕入先への対応です。少額の債権だけを先に支払う、重要な仕入先とだけ新しい条件で取引を続ける、といった判断が出てきますが、特定の債権者だけを優遇すると、他の債権者との間で問題になるおそれがあります。

どこまでが許される範囲かは、会社の状況や手続きの種類で変わります。支払いの順序を決める前に、弁護士や公認会計士へ確認することをおすすめします。制度の要件や最新の運用は、公的機関の案内をご確認ください。

相談の前に整理しておきたい4つのこと

相談の際に、次の4点がそろっていると話が早く進みます。

1つ目は、仕入先ごとの買掛金の残高と支払期日の一覧です。2つ目は、事業の継続に不可欠な取引先がどこか、その取引の割合です。3つ目は、契約書に取引停止や解除の条項があるかどうかです。4つ目は、取引先に説明する担当者と、その順番です。

これらは、買い手候補が事業の価値を判断する際にも必ず見られる資料です。早めに整えておくこと自体が、交渉を有利に進める準備になります。

まとめ

再生の検討は、取引先への伝え方しだいで、事業の継続性が大きく変わります。知られることを恐れて動けなくなるより、順番と範囲を決めて、先に準備を整えるほうが安全です。

TORUTEでは、熊本市・八代市を中心に、再生型M&Aや事業の引継ぎのご相談をお受けしています。関連する内容は、債務超過でも会社は残せる?~再生型M&Aとスポンサー型で事業をつなぐ方法~、資金繰りが厳しくなったら会社はどうなる?~私的整理と法的整理の違い~、会社を整理したら社長の個人保証はどうなる?もあわせてご覧ください。お気軽にご相談ください。

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